「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 三.お役立ち道を究める(後編)
本シリーズは、「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。
第三条前編では、「お役立ち道」は、「お役立ちの精神」と「技量」を磨き続けることであると確認をしました。本編では、「お役立ちイメージ」の効用を考え、“磨き続ける”方法についてご紹介します。
「お役立ちイメージ」を活き活きと描き、意志決定しよう
自分の中の「誰か・何かの役に立ちたい」という意識に的を当てて、「誰か・何か」に役立った結果、その対象がより良くなってもらえて、皆が活き活きとしている姿のイメージを描きます。それを、ジェックでは「お役立ちイメージ」と呼んでいます。自分自身の「ありたい未来像」とも言えます。このイメージは固定ではなく、自分の実力が向上するにつけ、より鮮明なものになってきます。また、現状が解ってもより鮮明になってきます。
ポイントは、自分がワクワクするようなイメージを描けるか否かです。それができれば、そのイメージを実現すること(ありたい未来像を実現すること)の意志決定をします。意志決定をすれば、全身がお役立ちイメージ実現の方向で動きだします。
意思決定をすることで、「ワクワク」「血湧き、肉踊る」状態になっているかが検証材料であると理解しておくと良いでしょう。
意思決定が組織に拡がり、組織のお役立ち使命になる
かつて、ホンダの創業者である、本田宗一郎さんが、今から60数年も前に、とことん役立つことを考えた結果として形になったのが「スーパーカブ」だと言われています。このバイクは、1958年の初代モデル販売以降、2017年に世界生産1億台を達成したという超ロングセラー商品の代表のようなものです。もちろん、一人で創ったわけではなく、本田氏の熱意(意志決定)を受けて、何人もの社員が試行錯誤を繰り返し、製品化していったことは言うまでもありません。役立つ知恵と情熱の結晶として、「スーパーカブ」が生まれたのではないでしょうか。さらに、時代の変化とともに、モデルチェンジを行い、その時々のお客様のお役に立とうという、本田氏亡き後も、お役立ちの想いが引き継がれているからこその偉業ではないかと思います。
つまり、お役立ちのイメージと意志決定は、本人のやる気や知恵のみならず、組織の協力者を引き出し、組織の知恵と力を結集することになるのです。
どの企業もそうだと思いますが、ジェックも、1964年の創業以来、理念をベースに、市場のニーズを先取りしていくために、「教育課題対応研修」から、「理念実現・経営課題解決支援」へと、創業時の想いを受け継ぎながら、お役立ちの幅を広げてきました。さらには、お役立ちの軸となる経営理念そのものも、下記のように進化させています。
行動理論の改革で企業の発展を図る |
行動理論の改革と集団性格の革新で企業の発展を図る |
お役立ちに満ちた経済社会を創るために、行動理論の改革と集団性格の革新で、お役立ち道を究めつづける企業を創る |
単に、儲かるから幅を広げるのではなく、自社の理念をベースに、強みが活きるお役立ちは何かを追究し続けているからこその進化だと考えています。これを忘れて儲けだけに走ると、企業は市場から信頼を失う結果となってしまうことは、どの経営トップも、肝に銘じていらっしゃることと思います。
人は誰しも、職業に付き、社会や他者に対して、役立つ使命を持って生まれてきています。その使命を自覚できた人は幸いであり、その人は、自分で自分を動機付けることが出来るようになります。常にお役立ちの使命を求め、問い続けることです。人間はどこまで進化できるか誰にも解りません。だから、「仕事は面白い」と思えるようになるのです。
社員一人ひとりと、チームや組織のお役立ち意識に着目し、お役立ち道を究める人と組織にしていくことが、経営トップが心の底から望む仕事ぶりであり、そのようなマネジメントを幹部以下ができるようになってもらいたいと思っているのです。
毎日の振り返りで、お役立ちの意識を磨き続けよう
お役立ちの意識を磨き続ける一つの手法として、私自身は、毎日の振り返りを記録するようにしています。それも、数値化する方法です。自分のお役立ち意識のベストの心理状態を目標化します。そして、その意識を「何パーセント意識できたか」を記入します。そして、その根拠となる感覚や出来事、それをどのように捉え、考えたかについて、文章化します。「何%進んだのか、もしくは踊り場にいるのか、後退したのか」等です。「できた部分は何か」…それは再現性のものなのか、深化や進化によってできたものなのか…等です。
ちなみに、2019年11月の目標は、「お客様トップとの面談で、<わくわくお役に立てる、案件づくり>を意識すること」です。11/5日は、25%でした。これは、先月から踊り場にいる状態です。踊り場は、ある程度継続すると、一気に上がることが多いので、底値鍛錬と捉えています。そして再現性を意識するようにします。
このように、自分の感情や目的・目標を客観視するだけでなく、自分の小さな学びや「気づき」と成長を自分で管理することに役立ちます。
もちろん、自由な振り返りノートですから、上手くいかなかったことや、感情を害したことなども記入します。これは、冷静になる機会にもなるし、物の見方・考え方を見直すチャンスにもなります。「小さな変革の積み重ねが、ある時、大きな変革を産む」と私自身は信じています。
以上、「お役立ち意識をメタ認知し、自らの使命を問い続ける、お役立ち道を究める個人とチームを創る」ことが、「仕事を謳歌する組織を創る条件」の三つ目になります。