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「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 三.お役立ち道を究める(前編)

本シリーズは、「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。

第二条「仕事に意味を見出す」では、「仕事に意味を見出すことの素晴らしさ」「内発的動機づけのマネジメント」「仕事の意味の見出し方」を確認しました。
今回は「仕事を謳歌する組織」の第三条「お役立ち道を究める」です。仕事の中で「お役立ち道」を究めることをご紹介します。




目次[非表示]

  1. 1.お役立ち道を究める
  2. 2.経営トップが望む姿
  3. 3.自分の中の「お役立ち意識」を意識(メタ認知)し、磨き続けよう



お役立ち道を究める


日本には、古来より、「道」のつく価値観があります。「茶道」「華道」「書道」「武道」や、ビジネスでは、近江商人や石田梅岩に代表される「商人道」という考え方もあります。「道」とは、「芸術・技芸などのそれぞれの分野。また、その精神真髄。(デジタル大辞泉 2019年11月12日閲覧)」のことです。

「お役立ち道」でいう「道」は、「ビジネスという分野において、社会や市場をより良くする価値を創造し続けるために、業務の専門性のレベルを磨き続けること」を言います。ビジネスの原点は、「お役立ち」にあると考えています。お役に立った結果としての業績があるという考え方です。

仕事の本来の意義は、社会や市場をより良くすることです。そのことに役立つから社会から存在を許されています。その品質は、常に市場のニーズ「デザイアー(顕在化された欲求)・ニーズ(見え隠れしている欲求)・ウオンツ(潜在的欲求)」を満たす価値を創造し、提供しながら、ライバルとの差異化を図り、ライバル以上のサービスや価値を提供し続けなければなりません。そのような市場変化と競争の原理の中で、役立ち続けることが求められています。更に、組織の中にいる我々一人ひとりも、市場は元より、他部門や次工程に、役立つことで存在が認められます。

このように、ビジネスの原点は、「お役に立つこと」なのです。

しかも、役立つことは人間の本来的喜びに直結しています。誰しも、お客様から感謝の言葉を頂き、不快に思うケースは少ないでしょう。逆に、お客様に喜んでいただくことや、お客様のより良い仕事を支援することを仕事のやりがいにしているビジネスパーソンが多いのではないでしょうか。また、次工程である他のメンバーに役立つことも仕事のやりがいにつながります。このように、仕事には、役立つ喜びが、直接・間接問わず、付随しているのです。

ジェックでは、お客様やその先のお客様、市場のニーズ「デザイアー・ニーズ・ウオンツ」を満たす価値を創り、提供し続ける「お役立ちの精神」と「技量」を磨き続けることを「お役立ち道」と言っています。    

また、どの技芸にも、高段者や、師範、達人と呼ばれる人たちがいます。この人たちは、その技芸の世界を究めている人たちです。

ビジネスの世界では、個人の専門性を磨くことはもちろん、チームや組織としてもお役立ちを磨き続けなければなりません。そして、個人としても、チームや組織としても「お役立ち道」を究めて、技芸でいう高段者や師範、達人を目指す必要があるのです。このことを「お役立ち道」を究めると言っています。

自動車部品のボルトとナットを作っていた企業がありました。その企業は、もっと「お役に立てるには…」と考え、ボルトとナットを作る機械そのものを自社の製品として売れるように単純化し、品質を上げていきました。そして、より良い製品を創ることに挑戦しているときに、生産ラインそのものもサービスの一つにすれば、お客様が導入しやすくなることに気づいたそうです。そして、数年後には、生産ラインそのものを企画・提案ができるようになり、その後、ファクトリー全体の設計から稼働までを自社のサービスにしていったそうです。この企業様は、経営トップのビジョンや戦略もさることながら、組織構成員の一人ひとりが、不断の自己変革に取り組んでこいたから、成し遂げられたのでしょう。スキルを変え、意識を変え、オペレーションを変え、自分たちの役割・使命を再定義し、行動化するまでに、どれほどの小さな変革の積み重ねがあったことか、とその苦労を乗り越えてきた姿に称賛を覚えずにはいられません。この企業様からは、お役立ち道を究めている姿を垣間見ることができます。

また、日本には創業100年以上という長寿企業が、30000社以上あると言われています。長年、ファン客を創り続けるには、品質を上げ続けるという日々の進化の取り組みがなくては、できないことでしょう。これも、お役立ち道を究めている姿の一つと言えるでしょう。



経営トップが望む姿


社員一人一人も、チームとしても、社会や市場、他部門や次工程に、役立つ価値を創り続けていく仕事ぶりを、経営トップは望んでいます。つまり、社員や幹部が、自主的に、個人としてもチームとしても、最高の自分を、仕事を通じて発揮し続けてくれることなのです。

自分やチームの最高を出すための、「物の見方・考え方」「スタンス」「スキル」を磨き続け、社会や市場がより良くなる価値を自社の強みを活かしながら、創り続けていってくれることを、心の底から望んでいるのです。



自分の中の「お役立ち意識」を意識(メタ認知)し、磨き続けよう


では、「お役立ち道」の原点を確認しておきましょう。それは、各自・各部門・各チームが、自分たちの責任や役割を理解するだけでなく、その仕事の意義や喜び、成果のイメージを可視化し、共有化することです。それは共通のビジョンや理念を持つことになり、求心力が培われるからです。

そのためにも、各自の心の中にある「お役立ちの喜び」をメタ認知することです。各自の「お役立ち意識」にスポットライトを当て、メタ認知で認識することは、マネジメント上でも実践することが重要な支援策となります。

そして、お役立ちの結果としてイメージや成果を可視化し共有化することは、チームや組織の求心力を強化するだけでなく、個人のお役立ち意識を強化し、技量を磨く動力にもなるのです。

そして、お役立ち意識が強くなればなるほど、やる気が出てくるばかりか、役立つ知恵が産まれやすくなるのです。  


「お役立ち意識」については、次回お話します。



葛西 浩平
葛西 浩平
株式会社ジェック 代表取締役会長

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