エンゲージメントを高める「お役立ちイメージ」 (2)「お役立ちイメージ」作成の3ステップ
「従業員エンゲージメント」とは、「個人と組織が対等の関係で、互いの成長に貢献し合う関係」のことです(HRプロ「用語集-エンゲージメント」2019.10.16閲覧)。
そのためには、個人も組織も「このことには誰(どこ)にも負けない、このことでこれだけの貢献ができる」コア・コンピタンスと、それに基づいたビジョンが確立できているという、「個の確立」が必要で、中でも、個人の個の確立を促すために、「お役立ちイメージ」を醸成することをジェックではご提案しています。
今回は、その作成の3ステップをご紹介します。
成功体験やわくわく体験が「お役立ちイメージ」の原点
「お役立ちイメージ」は、「お役立ちの源泉の発見」「お役立ち使命の確立」「お役立ちビジョンの構築と具現化」という三つの段階で探究を進めます。
探究する方法は、さまざまあります。
個人でみつめる、対象者同士の相互カウンセリング、上司との対話をミックスしながら、繰り返し自分自身の考えの掘り下げを行うと、効果が高いと考えています。
いわゆる「内省」にあたるのでしょうが、過去の失敗の反省や、できない部分を見つめるのではなく、成功体験や、わくわく体験を振り返り、そこから自分のエネルギーの源や強みを発見したり、そのエネルギーを今後どう使いたいのかを考えたりすることが中心なので、とても楽しい作業です。
以下に、探究の手順を3ステップでご紹介します。
STEP1 お役立ちの源泉の発見
自分の力が発揮できる「状況・シチュエーション」は何かを発見します。
●過去、自分が夢中になったことを沢山あげる
●なぜ、夢中になったのかを、上記の体験について一つ一つ考える
●それぞれの理由の共通点を発見しまとめる ⇒ 「お役立ちの源泉」
●自分の強み・感謝の素を書き出す
ここでは、過去、自分が夢中になったことを沢山あげて、その夢中になった理由から、「自分が夢中になれる、力を最大限に発揮できるシチュエーション」はどういうものかを探ります。
例えば、クラブ活動の時も、学園祭のイベント準備をしている時も、仕事でプロジェクト活動をしているときも、大体、自分は、リーダーの補佐として、皆の意見を引き出して場を活性化させたり、皆のアイデアが湧き出してそれぞれが楽しんで動いている状態をつくって目的を果たす、というシチュエーションだと、夢中になれるのではないか、ということです。
つまり、自分は、どういうときに、どんな役割を果たしながら、どんなお役立ちをしようとしているのか、これが、「お役立ちの源泉」なのです。
言葉は決まらなくてもかまいません。自分自身が、これまでも、これからも、このようなシチュエーションなら、自分が「夢中になれる」と思えるならば、OKです。
STEP2 お役立ち使命の確立
willやりたいこと(志)、canできること(強み)、must会社から期待されていること(理念含む)の接点を見つけ、この組織で何を成し遂げたいかを描きます。この接点を見出すことで、「エンゲージメント」が高まり、自分の強みで、組織にどんな貢献ができるのかが見えてきます。
●企業理念・会社から期待されていることは何かを考える
●この会社に入った原点を思い返す(どこが好きだったかのか、どんなお役立ちがしたかったのか)
●STEP1で探究した「自分の強み・感謝の素」と、「お役立ちの源泉」も踏まえて、これから仕事を通じて、どのようなお役立ちがしたいのか、を考える ⇒ 「お役立ち使命」
接点を見つけるのは難しい作業です。しかし、will、can、must、baseのどれも、捨てたり、あきらめたりすることが無いよう、統合していくことが必要です。じっくりと考えてみましょう。
「ここで何をなすのか」が決まると、「お役立ち使命」となります。
STEP3 お役立ちビジョンの構築とその具現化
具体的に実現したい姿や目標を設定し、長期・中期・短期の順で、実現のシナリオを描きます。
●誰を対象として、どのようなお役立ちをするのか(どのような価値を提供するのか)を考える(その理由も明らかにする)
●長期視点で、何年後に、どのような状態を、どのような手段で創りたいのかを描く ⇒ 「お役立ちビジョン」
●中期・短期とおろしていく
●これらを実践し達成するために磨き続けるお役立ちの心技体(心構え・スキル・行動習慣)は何かを抽出し、磨く方法を考える
ここで重要なのは、「長期」から中期、短期へとおろしていく考え方です。どうしても、短期の方がイメージしやすことから、短期から埋めていく場合が多く見られます。しかし、現状から考えていくと、「あれもできていない」「これもできていない」と、見える問題が気になり、それを解決してからじゃないと進めない、と思ってしまいがちになります。
目標設定も、「実現可能な」ものになってしまいます。さらに、既成概念の枠からなかなか出ることができず、イノベーティブなアイデアが出にくいともいわれます。
そこで、目指す姿、つまりお役立ちビジョンから、何ができるようになればよいか、という発想で、落とし込むと、短期目標も、チャレンジを伴う目標になり、お役立ちビジョンの実現に向かうことができるのです。