アフターサービス部門の変革
日本国内では、少子高齢化・市場の縮小が不安視されており、「需要創造」が叫ばれています。一方で、現在の多くの企業で、グローバルな展開が命題となっています。
そのような中、アフターサービス部門がこれから担うべき役割とは何か、そのための課題を整理してみたいと思います。
目次[非表示]
アフターサービス部門の重要性が高まっている
日本国内では、市場が成熟し、製品の販売(営業)だけで利益を確保することは極めて厳しくなってきました。また、国連サミットが打ち出したSDGs(持続可能な開発目標)でも、企業が担う役割の再定義が迫られています。そのような中、アフターサービス部門(修理・メンテナンス部門)の果たす役割に期待がかかっており、アフターサービスを含めたトータルのビジネスモデルを描く企業が、今では当たり前になっています。
- 「製品」で収益を上げるこれまでのビジネスモデルから、「サービス(修理・メンテナンス・バージョンアップ・周辺機器の組み合わせを含めたソリューション等)」で収益を上げるビジネスモデルへ転換する
- 一度買っていただいた顧客を大切にすることで、循環型のビジネスモデルの実現を目指す
- グローバル化という観点からも、日本国内で実現した高いサービスレベルを、海外でのアフターサービスにおいてもスタンダードとし、自社ブランドの競争力を高めていく
- 資源の枯渇、環境破壊という観点から、一度買った製品を手入れしながら長く使うことが主流となっており、「経年劣化」ではなく「経年美化」をコンセプトとした商品の開発もさらに進む
こうした流れの中で、顧客との接点を担うアフターサービス部門の重要性はますます高まるとともに、多様でダイナミックな変革が進んでいくと思われます。
コストセンターからプロフィットセンターへ。さらにマーケティングセンターへ
では、どの方向に変革をしていけばいいのかを考えていきましょう。
コストセンター
アフターサービス部門は、従来は「コストセンター」と考えられていました。つまり、「製品」を買ってくださった顧客に、快適に製品を使っていただくための、最低限のメンテナンス・修理を行う、という発想です。「サービスは無料で提供されるもの」という市場の認識も高く、製品購入の「おまけ」としての役割が長く続いてきました。企業も、製品がどんどん売れる時代は、製品で収益を上げ、次の製品に乗り換えていただくまでのつなぎとして、「アフターサービス」がある、という位置づけだったので、「コスト」がかかるのも当然だ、と考えていたようです。
プロフィットセンター
ところが、2000年ごろから、成熟市場・飽和市場で「製品」の販売で収益を上げることが難しく、使う側も、「購入したものは、できるだけ長く使いたい」というニーズが増えました。その結果、サービス部門に注目が集まり、「サービスは、提供した価値に見合った対価が支払われるもの」という認識が広がり始めました。ただし、それまでの「メンテナンス・修理対応」だけでは、提供価値が変わらないため、顧客も報酬を払うことに納得がいきません。そのため、「ソリューション提供型」のアフターサービス部門として、顧客の問題・課題を解決するための、周辺機器の提案や、長期保守契約の提案などを行う企業が増えてきました。
しかし、アフターサービス部門の現場では、「長年、我々は機械と向き合ってやってきた。それなのに、なぜいまさら、モノや不要なサービスを売らなければならないのか。売るのは営業の仕事ではないのか。」というとまどいもあり、成功する企業もある一方で、うまくいかない企業も多いようです。
ジェックでも、多くのアフターサービス部門のご支援をしていますが、最も多いのが、この「コストセンターからプロフィットセンタ-へ」というテーマです。各社様、熱心に取り組まれています。
マーケティングセンター
プロフィットセンターとして、「顧客のソリューション」に取り組んでいると、「機械情報」以外のさまざまな情報がアフターサービスの担当者に集まります。アフターサービスの担当者は、基本的に、「機械が好き」で、「誠実」で、「現場を良く知っている」という印象を顧客が持つことが多く、ともすると、営業には話さないことまで、アフターサービスの担当者(サービスエンジニア、カスタマエンジニア等)には、話してくださることが多いのです。
これまではアフターサービスの担当者の頭の中で整理されていたこれらの情報を、組織としてプールし、機械やサービスの改善、ひいては、新しい儲けの種として活用していこうという動きが起こっています。つまり、開発の起点となる部門、「マーケティングセンター」としての期待が高まっているのです。
以上のように、アフターサービス部門の役割・期待は、年々進化しています。
そこで、現在、どのような課題がアフターサービス部門に多いのかを、整理してみましょう。
組織マネジメントにおける課題
今回は、技能習得についての課題はまとめていませんので、ご了承ください。
サービスマネジメントによる事業変革促進
自社のアフターサービス部門は、「どのような価値(サービス)を提供する部門なのか」を再定義(コンセプトチェンジ)し、ビジネスモデル変革とそれを実現する組織変革、顧客との関係性の進化、新たな価値創造のためのイノベーションを促進します。最終的には、アフターサービス部門で得た情報を、どのように組織内に循環させ、新たな価値を創造するかという開発体制の構想までをつくり、変革していくことが重要です。
コンセプト・戦略浸透
サービスコンセプトが打ち出されたあと、現場まで浸透させ、現場の動きがどう変わるのか、求められるスキルは何なのかを考え、実践していくことが求められます。
組織文化革新・マネジメント革新
現場の一人ひとりが、新しい方向性を理解し、共感し、現場で考え、顧客と価値の共創をしていくためには、「組織文化」そのものが創造的である一方で、「安全文化」の醸成も必要です。また、上意下達型ではなく、現場主導の自律を促進していくマネジメントに革新する必要があります。
問題解決力向上
「ソリューション提供型」のサービス展開、マーケティングセンターとしての新価値創造を実現するためには、問題解決力向上(コンセプチュアルスキル向上)が不可欠です。
顧客接点における課題
ファン客創造型応対力向上
機械のプロとしての技能と同時に、顧客の立場に立った応対力を磨き、お客様に「この会社・この人にこれからもお願いしたい」と思っていただけるような信頼関係を築くことが求められます。顧客に訪問するアフターサービス担当者だけでなく、第一次応対のフロント部門や、コールセンターまで、トータルで応対力の向上と、ニーズの引き出しを行うことが求められます。
苦情対応や、代金回収など、苦手とされている基本的な応対スキルも磨くことが重要です。
ソリューション提案力向上
顧客の「見える問題」だけでなく、潜在化している「探す問題」、さらには、顧客が「こうなりたい」という方向性を実現するために、何ができるようになればよいかの「創る問題」まで、顧客が、さらにその先の顧客から選ばれ続けるための、トータルのソリューション提案ができるようになることが求められます。
価値共創のダイヤモンド型接点構築
顧客が、その先の顧客から選ばれ続けるためには、アフターサービス担当者のみが接点を持つより、組織対組織で、「新たな価値」を共創する関係性を築くことが重要です。
以上、サービス部門のこれからの方向性と課題を整理しました。
アフターサービス部門に求められる機能、役割は企業によって異なります。また、業界、業種、創業以来の歴史等々、企業を取り巻く環境は千差万別であり、それらを踏まえて打ち出される戦略や描くビジネスモデルによっても異なってきます。
顧客から選ばれ続け、新しい時代を築いていくために、自社(自社のアフターサービス部門)はどの方向に向かうのか、そのためには、何が必要かを考える機会としていただければ幸いです。
この記事に関連するソリューションは下記をクリック↓↓
https://www.jecc-net.co.jp/service/solutionSVISS