「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 六.仲間と分かち合う
本シリーズは、「お役立ち道の経営」推進に欠かせない「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。
今回は、第六条「仲間と分かち合う」。シリーズ完結編です!
目次[非表示]
- 1.「仲間と分かち合う」とは
- 2.「仲間と分かち合う」には
- 2.1.私の場合-暗中模索の中で築いた人間関係
- 2.2.「共創のパートナー」関係
- 2.3.分かち合うことを実感
- 3.「仲間と分かち合う」為の留意点
- 4.おわりに
「仲間と分かち合う」とは
仕事には自己完結型の仕事もありますが、組織を選択している場合は、何かしらの他者との関わりの中で、仕事が回るようになっています。日本社会は、特に、仲間と歩調を合わせたり、共に喜んだり悲しんだり、不平不満を言い合ったりすることは、仲の良い人間関係であることを言い表しているようなところがあります。しかし、チームでのシナジー効果や、連携プレーによる生産性の向上、また、新たな知恵の創造と言うことになると、必ずしも、上手くいっているはと言えないようです。
これは、単に、仲が良いに留まらず、創造的なチームワークが発揮できるようになるためには、時には、意見の対立をすることもあり、また、その対立を乗り越える知恵が必要になる場合があるからです。意見の「対立」を恐れず、「対立」からより良い知恵を産みだすためには、信頼関係が必要になります。
具体的には、
- 他人を尊重すると同時に自分も尊重された人間関係をお互いに創る。
- お互いの強みが活かされ、チームとしての達成感や充実感を持って仕事に取り組めるようになる。
- チームの自発性と挑戦意欲が継続的に発揮されるようになる。
- 「対立」から「統合」の知恵を共に創るための思考を尊重できる。
等のような信頼関係があって、初めて、チームとしてのシナジーや、知恵の創出が可能になるのです。
P.F.ドラッカーも、「組織の文化とは、仲よくやっていくことではない。大切なことは、仲のよさではなく、仕事ぶりのよさである。(P.F.ドラッカー『ドラッカー名著集2 現代の経営[上]』上田惇生訳, 2006, ダイヤモンド社, Kindle版 №2712)」と言っているように、仕事を謳歌しようとした場合の「仲間と分かち合う」と言うのは、単に「仲良く」ではなく、共に「より良くする知恵」を出せる関係を維持できるということなのです。
「仲間と分かち合う」には
仕事上の「不平・不満、不安や上手くいかなかったこと」を仲間と共有することは、その人の心を軽くするためにも、時として有効になる場合があります。それは、仲間が一種のカウンセラーの役目を果たすことで、「吐出し効果」とも言われています。
一般的には、「ネガティブな言動を、誰かに聞いてもらえば、自分自身を客観的に見ることができるようになり、前向きに考えられるようになる」と言われています。しかし、それで終われば、「不平・不安・不満のネガティビィティ」のたらい回しになるばかりか、下手をすれば、雪だるまのように大きくなってしまい、単にモラルが下がると言う危険性もはらんでいます。
よって、ビジネスでは、よりポジティブになれる「物の見方・考え方」に気付いたり、知恵を出して、解決を試みなければなりません。その解決策があってこそ、本当の意味で、「仲間と分かち合う」ことができるようになるのです。
では、どうすれば、「仲間と分かち合う」ことができるのかを考えたいと思います。
私の場合-暗中模索の中で築いた人間関係
私は、ジェックに中途採用で営業職として入社しました。営業は、お客様との関係性をどう構築するかで、営業成績も、やりがいも大きく変わります。お客様との信頼関係を築くにはどうすればよいのか、いろいろと試行錯誤を繰り返していました。
ある日、「信頼関係」と言っているけど、具体的にはどのような関係だろうと考えてみたところ、私にとっての「信頼関係」とは、「お互いを認め合い、共通の目的や目標達成に向けて知恵を出し合い、お互いの強みで実現に向かう関係」であることがわかりました。
そしてふと社内でもこういう関係をつくっているのだろうかと振り返ると、決してそうではないことに気づきました。そこでまず、お客様とそういう関係性を築くまえに、社内で実践をしてみることにしました。
「共創のパートナー」関係
転職経験がある私から見ると、ジェック社内は、公式・非公式のコミュニケーションの機会も多く、お互いの成果をたたえ合ったり、愚痴を言い合ったりと、比較的仲の良い社風だと感じていました。ただ、前述したように「仲が良い」のと「(数字目標以外の)共通の目的や目標の達成に共に取り組むパートナー」かどうか、という点では、まだまだだなと感じる面もありました。
そこで、通常のコミュニケーションに加えて、「共創のパートナー」を意識して(※後述の留意点の実施)コミュニケーションを取るようにしていったのです。そうすると、それぞれの経験に基づく知恵が引き出せたり、その知恵を膨らませて新たな知恵にする場面も発生してきたのです。部門のミーティングも「なぜ、できないのか」を追求するだけでなく、「どうすればできるのかの知恵を出し合う」比率が高まってきたのです。
このような関係性を「共創のパートナー」といいます。
分かち合うことを実感
このようにそれぞれが、「共創のパートナー」のスタンスとコミュニケーションスキルを用いて、取り組むことが、生産性を上げるばかりか、「意見対立」を「統合の知恵」に変え、「共に喜び、悲しみや苦労を共にできる」確率が高くなりました。共に考え、共に実行し、共に形にする。そして、成果を喜び合ったり、悔しがったりして、次につなげる。こういった共創作業をすると、「仲間と分かち合う」喜びや充実感が持てるようになるのです。
最終的には、「共創のパートナー」関係を築くことができたお客様も増えてきました。
社内でも社外でも、生涯の「共創のパートナー」として、長く信頼関係を築くことも可能になることは、その人のビジネス人生の宝物と言えるでしょう。
では、その留意点をまとめておきましょう。
「仲間と分かち合う」為の留意点
では、その留意点をまとめておきましょう。
- 共通の目的・目標を持つ:共通の目的・目標を持った仲間は、よき同志となり、パートナーの条件になる。
- 自尊・他尊の精神を持つ:相手を認めると同時に、相手からも自分を認められれば、信頼関係を創る基本となる。
- 強みに責任を持つ:自分の強みで責任を果たすから、信頼関係が生まれる。
- シナリオを共に創る:お互いの強みでシナリオ作りに知恵を出すことで、連携プレーが育つ。
- パートナーのスタンスを磨く:「自分の出方」を「共創のパートナー」のスタンスに置くことで、相手との信頼関係が促進される。
- 主張・傾聴のスキルを磨く:主張のスキル(自分の意見を相手に伝わりやすい伝え方で伝える)、傾聴のスキル(相手の意見や感情を肯定的に受け入れる聞き方で聞く)が、磨かれるほどに、人間関係は円滑になる。
- ファシリーターのスキルを磨く:意見を引き出し、意見を深め、まとめるスキルを磨けば、共創型コミュニケーションが取れるようになる。
- 信頼関係づくりを意図する:「共創のパートナー」の関係は、段階(関係促進・納得促進・パートナー促進・共創促進」を踏んで、醸成する。
- 共創型コミュニケーションを意図する:「知恵の開発」につなげるための会議であり、ワークショップであることを意識して、共創型コミュニケーションを取ることで、共感性や参画意欲が高まる。
- モラルを大切にする:モラルを尊び、向上させることは、仲間を尊び、仕事の安心感と質を高め、信頼関係づくりの土台になり、モラール(やる気)を高めることになる。
以上の留意点を、活用することで、「仲間と分かち合う」喜びと安心感が培われ、より「仕事を謳歌する」ことが促進されるでしょう。
以上で、このシリーズは終了です。
おわりに
「仕事を謳歌する組織を創ること」は、経営者として、最重要課題であると思います。
経営トップが「仕事を謳歌する」方向を打ち出せば、共感・共鳴できるメンバーが、組織を支える中核社員として存在価値を発揮してくれるでしょう。
何故ならば、組織構成員の多くは、「仕事を謳歌したい」と心底では思っているからです。
読者諸賢のご発展を心からお祈り申し上げます。
完