「Society 5.0」における企業革新の方向性と3つの指標
「Society 5.0」という言葉をよく聞くようになりました。
2019年4月1日に行われた入社式で、日立製作所の東原敏昭社長が、以下のようにあいさつをされています。
このような日立が進める社会イノベーション事業は、2015年に国連で採択された「Sustainable Development Goals(SDGs)」や日本が取り組んでいる「Society 5.0」で掲げられている豊かな社会の実現に向けた取り組みそのものであり、まさに日立がリーダーシップを発揮する時が来たと思っています。
日立製作所2019年度4月入社式 社長メッセージ(抜粋) 2019年4月4日閲覧
そこで今回は、「Society 5.0」とは何か? 「Society 5.0」がもたらす社会とはどういうものか?企業の役割は何か?を考えていきたいと思います。
「Society 5.0」とは
Society 5.0は、平成28年1月22日に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」(平成28年~32年度 ※令和2年度)で提唱されたこれからの社会のあり方(人間中心の超スマート社会)のことで、経団連が「ともに創造する未来」として2018年から本格的に発信をするようになって、一気に広まった感があります。「第4次産業革命」によってもたらされる社会であり、国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながります。
Society 5.0 とは
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。内閣府「Society 5.0」 2019年4月4日閲覧 ※下図も同様
つまり、AIやビッグデータ、IoTなどの科学技術を人々の暮らしに活かすことで、誰もが幸せな人生を享受することができる社会であるといえるでしょう。そして、それは「誰かが創る」のではなく、我々一人ひとりが社会に参画し、「ともに創る」ことで実現するのです。では具体的に、何がどう変わるのでしょうか。
これまでとこれから。どう変わる?
下の図をご覧ください。
内閣府「Society 5.0」 2019年4月4日閲覧
まとめると、以下の二つに大別できそうです。
●人が足りなかったり、能力の限界等をカバーしたりする
●あふれる情報を整理・分析し、必要な人に必要な情報を届けることができるようになる
昨今、特に前者を指して、人間の仕事が奪われるのではないかといわれていますが、「奪う」ということではなく、手や能力が足りない部分を「代行し、さらに質の高い仕事をする」というのが正解なのではないかと思います。
はたして我々は働く場を失うことになるのでしょうか。我々企業は、どのような役割を果たせばよいのでしょうか。
企業革新の方向性
経団連が2018年11月に発表した「Society 5.0 -ともに創造する未来-」によると、以下の記述があります。
今後、人間に強く求められるのは、世の中を変える「想像力」とそれを実現する「創造力」である。(p.9)
企業が創造し、社会に循環する価値を増大するための戦略が必要である。社会や組織が持続的に活力を生み出し続けるために産業の新陳代謝を図ると共に、組織とそこで働く多様な人が価値を生み出す土台を整える必要がある。(p.30)
一般社団法人 日本経済団体連合会 「Society 5.0 -ともに創造する未来-」 2019年4月4日閲覧
企業は、進化する科学技術を活用し、一人ひとりが豊かに暮らすことができる社会をつくる役割があります。そのためには、新しい価値をどんどん創りだしていくことが求められます。これがイノベーションです。
ただし、イノベーションは、必ずしも「科学技術を活用する」という前提ではありません。これまでにない取り組みや、価値の提供もイノベーションと考えてよいのではないかと思います。
新しい価値をどんどん創りだすのは、そこにいる社員です。しかし、社員だけで取り組むのではなく、社会をより良くするには、地域社会の人びとと情報を交換し、異質なものを組み合わせ、アイデアを出し合い、国を越えて良い事例を共有し活用し合う、そして、これまでの既成概念・固定観念にとらわれず、世の中の役に立つモノやコト・生活を豊かにしていくモノやコトを、それぞれ関わる人や組織を巻き込み、ともに創り続けていくのです。企業は、社員が安心して、このような活動ができる組織づくり・文化づくりを行うことも、重要な取り組みの一つです。
イノベーションを起こし続ける企業になるための3つの指標
組織は、長い間「上意下達」「ピラミッド型」の指示命令型組織が一般的でした。最近は、組織のあり方も随分変わってきています。しかし、まだ、多少の創意工夫があったとしても、決められた仕事をきちんとやりきることが一番の責任であり、評価される点だという企業も多いのではないでしょうか。
日本国内を見ても、「失敗を恐れる」文化や、「出る杭が打たれる」文化が、以前より強くなってきているようにも感じます。
そこで、イノベーションを起こし続ける企業になるための3つの指標をご紹介します。
挑戦
「ライバルに勝つ」ための挑戦ではなく、「新たな価値を創造し続ける」ことへの挑戦であること。
既成概念にとらわれず、社員や組織の可能性を追求し続けることで、今までにない価値を生み出すことができる。
協調
「役割を分担する」「チームワークを良くする」だけでなく、「お互いの強みで、新たな価値を”共創”し合う」こと。
さらには、その取組みを通じて、それぞれが持っている”志”や”めざす姿”を実現し合う”同志”的な関係性を築く。
お役立ち
「お金儲け」や「身近な人」へのお役立ちのための価値共創ではなく、広く社会に対するお役立ちにつながっていること。
高い志をもって、社会に貢献しようとする人や企業が増えることで、Society 5.0、SDGsの達成につながる。
これらの指標の「価値観と、それに基づく行動様式」が根づいている組織ほど、価値共創ができ、結果として、成長し続ける組織と考えています。ジェックでは、これらの3指標を「集団性格」として提唱をしています。
ぜひ、この3つの指標を経営の中に取り入れてはいかがでしょうか。