メンバーの「報告」の良し悪しはマネジャーで決まる
「メンバーの報告が悪い」と嘆く上司
マネジャー研修を担当していてよく出てくる不満の一つに、「メンバーの報連相が悪い」があります。
特に、「報告をしてこない」「報告内容が不足している」などの報告についての不満が多いようです。
新入社員研修へのご要望でも、「現場から新人の報連相が悪いという意見が出ている。特に報告のやり方を徹底してほしい」という要望が増えています。
しかし、同じ企業内でも「メンバーの報告が悪い」というマネジャーと、「メンバーの報告に不満はない」というマネジャーが混在しています。
そして不思議なことに、マネジャーが人事異動した途端に、「報告が悪い」と言われていたメンバーの報告が改善するということがあります。
このような現象を見て感じるのは、メンバーの報告の良し悪しは、上司にも原因があるのではないかということです。
「報告が悪い」チームをつくる上司とは
「メンバーの報告が悪い」状態のチームを作ってしまう上司には、どのような特徴があるでしょうか。
自分の「報告の好み」を伝えていない
「メンバーの報告が悪い」と嘆いている上司の話を聞いていると、「大切なことを口頭で報告してくる」とか「日報の書き方がざっくりしている」など、報告の仕方そのものに不満を持っているケースが多いようです。
つまり、メンバーは報告をしていないわけではないですが、上司の好みに合わない報告の仕方をしているということです。
上司は自分がどのように報告されると分かりやすいか、「報告の好み」をあらかじめ伝えるだけで、報告への不満はかなり解消します。
報告に対するフィードバックがない
日報も報告の一種ですが、上司はメンバーが書いた日報に毎日コメントしていますか?
もし、上司のコメントがないのであれば、メンバーは「上司は見てくれていない」と思い、だんだんと書く内容がざっくりしてきます。そのような日報を見て上司が「日報の内容が分かりづらい」とメンバーに指摘してもなかなか改善はしないでしょう。
日報のみならず、メンバーから報告されたことに対しては、「この前報告してくれた〇〇については、対応しておいたよ」などとフィードバックがあると、報告しがいのある上司になるわけです。
そもそも上司が報告をしていない
人は、他人から何かをしてもらった時に「お返しをしなくてはならない」と感じます。これを返報性の法則と呼んでいます。
上司がメンバーに対して、「上層部で△△という決定があった」「この前、お客様からこのような情報をもらった」など、こまめに報告をしていれば、メンバーも上司に報告をしなくてはと感じるはずです。
しかし、自分はあまり報告をすることなく、メンバーに報告ばかり求めていると、メンバーはやらされ感が増し、ますます報告が悪くなっていくことも考えられます。
報告するのが面倒だと思われている
「あの上司に報告するのは面倒だ」と思われてしまうと、なかなか報告をしてもらえなくなります。
例えば、気分の波が激しく、イライラしていることが多い上司です。メンバーは何かを報告する際に上司の顔色を見て、機嫌の良さそうなタイミングを狙わなくてはなりません。それ自体が面倒くさいのです。
また、報告している最中に「要するに何が言いたいの?」と突っ込んだり、「そんなこといちいち報告してこないでください」などといったネガティブな発言をされると、ますます報告することが面倒になります。
この中で一つでも思い当たることがあれば、早々に改善してみてください。意識するだけでメンバーの報告が良くなるかもしれません。
報告の大切さを伝えているか
あなたのチームメンバーに「なぜ、上司に報告することが大切なのか」と質問して、答えられる人はいますか?
メンバー対象の研修でこの質問をして明確に答える人はごく少数です。中には、「上司が私たちを管理したいからじゃないですか?」と言い放つメンバーもいます。
メンバーに一番伝えていただきたいのは、「報告は自分のためにする」ということです。
報告をした時点で上司は状況を認識するわけですから、上司とメンバーの共通事項になります。メンバーが困っていればアドバイスをしたり、助ける義務も出てきます。つまり、上司に報告すれば力が倍増するということです。
また、報告をすることで一度自分自身の状況を振り返ることになります。特に日報などは、自分の一日の行動をじっくり振り返る良い機会です。振り返ることで、次への行動を考えるきっかけにつながり、より良いパフォーマンスにつながります。
「報告をさせる」感覚を改める
上司の経験が長くなると、「報告をさせる」という感覚に陥る人が増えます。すると、メンバーは「報告をさせられている」と感じ、嫌々ながら報告をするようになります。
「報告をしやすい状況を作る」ことを心掛けたいですね。
*この記事は株式会社ジェックの「行動人」458号より転載・加筆いたしました。