メンバーからの提案をチーム力アップにつなげる
「報・連・相」+「提案」
メンバーが、上司や他のメンバーに積極的に提案を行い、さまざまな面でチーム内の改善が進めば、成果が出やすい状況となります。つまり、チーム力が高まります。
そして、メンバーは提案することの必要性と重要性を認識しています。
しかし、メンバークラスの研修で「ここ1ヵ月以内で、上司やメンバーに何か提案した人はいますか?」と質問すると、挙手をする人はほとんどいませんでした。「では、3カ月以内は?」と期間を広げても挙手がありません。
つまり、提案の必要性は分かっていながら、実際には提案をしていないのです。
なぜ、提案をしないのか
なぜ提案をしないかと尋ねると、「提案しても、どうせ上司に却下される」という人が多いようです。
上司の立場からすると、実施するメリットを感じない提案を却下することは当然です。
また、一度却下したくらいで提案を諦めるなら、それは本気ではなかったとも受け取れます。メンバークラスの研修では「上司に一度提案を断られても諦めず、手直しして3回は提案しよう」とレクチャーをしています。
では、「提案を諦める」のは、メンバーだけに問題があるのでしょうか?
そうとも言い切れません。
上司の対応いかんで、「提案を諦める」「提案を諦めない」が決まることも多いからです。
簡単に提案を諦めさせないために
上司が却下する提案は、次のような傾向があります。
▶抽象的で、何をするかが分からない。
▶「○○してほしい」など、単なる要望になっている。
▶コストや時間を考えると現実的ではない。
このような提案を見ると、
「何を考えているんだ。こんなのできるわけないだろう」と一刀両断してしまう上司もいます。
すると、メンバーは「ここまで言われたら、もうだめか...」と諦めてしまいがちです。
しかし、メンバーは市場と一番近いところで仕事をし、日々の仕事で問題意識を感じ、さまざまなアイデアを持っています。
最初の提案内容に納得がいかなかっただけで、完全に却下してしまうのはもったいないことも多いはずです。
上司の皆さんには、ぜひ単なる却下ではなく、次のような対応をお願いします。
①却下の理由を具体的に伝える
抽象的だったり、単なる要望に過ぎない提案を、安易に通すわけにはいきません。
しかし、メンバーも「なぜ、却下されたのか」が分からないと、手直しする気が起こりません。
そこで、提案を却下した理由を、明確に伝えてあげてください。「この点がもっと分かりやすければよい」「どれくらい時間がかかるか分かれば考える」など、具体的なコメントがあると、もう一度手直しして提出する意欲が湧くはずです。
②協力者を統介する
一人で考えているがゆえに、提案内容が不十分になっていることもあり得ます。その分野を得意とする人が加われば、一気に良い提案内容になることもあります。
「本気でこの提案を通したいなら、〇〇さんのアドバイスを受けてみたらどうか」と、協力者を紹介することで、提案のクオリティーを高めることも大切です。
③提案した行為自体は評価する
提案内容が不十分だったとしても、勇気を持って提案をしたこと自体は評価できます。
そこで、「この件について、提案をしてくれたことはありがたいと思っている」など、提案行為は評価をしてください。
提案することは良い行いだという認識を持てれば、諦めずに、2回目の提案を持っていく行為につながります。
2回目以降の提案に対しての対応
メンバーが、諦めずに2回目の提案を持ってきた場合、次のような対応をしましょう。
もし、内容がまだまだ不足しているようであれば、先ほどの①~③を参考に改めて却下してもよいでしょう。内容が比較的良いようでしたら、その提案に対してどの程度本気なのかを確かめる必要があります。
それには、「内容は良いと思う。これは誰が中心になって、いつからやるのか?」という質問を投げかけます。
この質問に対して、「はい、私がやります」という答えが返ってきたら、その場で即承認して良いでしょう。
一方で、「えっと...、総務の△△さんが...」などと、歯切れの悪い答えが返ってきた場合は、改めて却下です。
却下の理由は「誰が、いつからやるかが不明確」、つまり、当事者意識がないままに他力本願的な提案になっているという点を伝えることが必要です。
次の3回目の提案で、提案者自身が当事者となって具体的なスケジュールまで出てきたらぜひ承認してください。
単に提案を却下するのではなく、むしろメンバーの提案に対する気持ちを高め、提案内容の実現を通じて、チーム力を高めましょう。
*この記事は株式会社ジェックの「行動人」459号より転載・加筆いたしました。