新人に「この会社では成長できない」と思わせないために
新人の「将来への不安」は「成長実感の無さ」による
入社後、仕事や環境に慣れてくると、新人の皆さんは、「このままでよいか」「他と比べて自分は大丈夫か」など不安が生まれやすくなります。これは成長の過程で多くの新人が経験することです。
そして、このような時の新人に対して、先輩や上司の対応こそ重要と言えます。新人の育成や離職防止について、さまざまな観点で多くの情報がでています。今回は、新人が会社に対して求める重要なキーワード『成長』に着目して考えてみましょう。
辞めていく理由「成長できない」「期待が持てない」
昨年、2023年度新入社員の傾向も、「長期間、安心して働けること(50.9%)、仕事を通じて自己成長を遂げること(46.2%)」が上位にきました(※)。
この傾向から、ここ数年、Z世代に嫌われると言われているのが「ゆるブラック」企業です。残業やストレスのないホワイトな労働環境を重視するため、新人が慣れない仕事で時間がかかり、労働時間が長くなってしまうことを避けるため、そもそも新人には時間のかかる仕事はやらせないという方法をとった企業が少なくありませんでした。それに対して、「実力を養う経験やストレッチもなく、成長実感が持てない企業だ」と離職につながりました。
そして、コロナ禍でリアルの対面が少なかった学生に配慮して、じっくり育成しようとする企業が「ゆるブラック」と思われることも少なからずあったようです。新人と育成側の意思疎通がうまくいかないとそのような誤解も生まれてしまいます。
※HRプロ 2023年度 新入社員の会社生活調査 学校法人産業能率大学 総合研究所 https://www.hrpro.co.jp/download_detail.php?ccd=00493&pno=51
「この会社にいても成長できない」と思わせてしまう関わり方と留意点
採用した新人に対して、成長や活躍を期待しない企業はありません。
しかし、それが新人に伝わっていなかったり、育成計画が現場であいまいで流動的だったりすると、新人は不安や不満を感じます。情報の共有とキャリアパスの明示などが必要です。
現場で次のような関わり方をしていませんか。
●仕事を指示するときに、「とにかくやってみて」「わからなかったら質問するように」などで依頼をしている。
●新人からの質問や意見に対して、十分な回答ができていない。
●新人には確実にできる仕事しか回していない。
●ネガティブな発言が多い。
このような関わり方に対して、新人がどのように感じるかを「新人の心理」として、そうさせないための「留意点」をまとめました。
状 況 |
新人の心理 |
留意点 |
仕事を指示するときに、「とにかくやってみて」「わからなかったら質問して」などで依頼している。 |
やってみてと言われたのでやってみたらダメ出しされた。適当な指示でやらせておいて無責任だ。自分はこんな先輩/上司にはなりたくない。 |
新人に創意工夫を求める意図であれば、目的や関連する情報をより詳細に伝える必要があり、新人の習熟度の見極めも必要。また、新人に育成計画や現段階を共有し、意識してチャレンジしてもらうようにする。 |
新人からの質問や意見に対して、十分な回答ができていない。 |
意見に対して、「そうだよね、わかりにくいよね」などと共感はしてくれるが、結局は、自分の意見がどうなったのか不明。無視されたのか。 |
経験が浅いため不明な点が多い。全体像や仕事の前後の工程や意味を丁寧に伝える必要がある。また新人からの意見を、「まだわかってないから」と無下にすることは新たな視点の損失にもなる。即答や即応ができなかった場合の対処も重要。 |
新人には確実にできる仕事しか回していない。 |
いつも同じような仕事ばかりで、自分は期待されていない。 |
丁寧に教育することは大事だが、新人の成長度合いを細かく見極めてステップアップさせていく。期待を都度表現する。 |
ネガティブな発言が多い。 |
先輩たちは「どうせがんばったところで」や「給料は変わらないし」などばかり。このままここで働き続けて大丈夫だろうか。 |
新人は身近な人の影響を受けることを意識する。会社全体に閉塞感があると、新人はさらに不安になる。先輩/上司が、自らが閉塞感を打開し、向上心を引き出すような行動を起こす。 |
意思疎通がうまくいかないときには、伝える側・受け取る側それぞれの思い込みが強く影響しています。
どのような人材に育ってもらいたいのか、どのような活躍をしてほしいのかを丁寧に伝え、お互いの共通認識とすることが重要です。
そして、それを育成担当者や上司だけではなく、全社としての若手育成戦略とすることで、新人の成長促進につながります。
※参考