現場で陥りやすい新人の心理状況
入社し、新入社員研修などを受け、現場に配属された新人の中には、「研修で学んだこととはずいぶん違う」「相談するにもみんな忙しそうで声なんてかけられない」などの現状に戸惑い、その壁を乗り越えられず、最悪の場合早期退職してしまうこともあります。原因はどこにあるのでしょうか。
夢と期待と若干の不安を抱えて入社した新入社員の皆さんは、新入社員研修などで企業活動の原則を学び、「企業は貢献による報酬、挨拶をすることが大事、報・連・相が重要、美点凝視の精神、よし、頑張るぞ!」という気持ちで職場に入ります。
しかし、企業というのはより良い状態を目指して常に変化し続けるものですし、また全ての上司・先輩が必ずしも企業活動の原則を意識して行動しているとは限りません。そのような中で、以下のような心理状況に陥る新入社員は少なくありません。
現場で陥りやすい新入社員の心理状況
●こちらから挨拶しても挨拶してくれない人が多い。もう面倒くさいから挨拶なんかやめた。
●先輩たちが忙しそうで、ピリピリしている。とてもじゃないけどこちらから話し掛けるなんてできそうもない。
●こっちはまだ何もわからないんだから、もっときちんと面倒を見てくれるのが先輩や上司の役割なんじゃないか? 結局会社なんて冷たいところだ。
●自分はどっちかって言うと明るいほうではない。これは性格だから仕方ないじゃないか。
それなのに先輩たちは明るくて話し上手な○○君ばかり構っている。お調子者になってまで会社の人と仲良くならなくてもいいと思う。
●報・連・相が大切って言ったって、報告しようにも、上司がほとんどいない。どうやって報・連・相すればいいんだ。報・連・相させたいなら、いつもできるところにいてほしい。
●せっかく報告しようとしたのに、「忙しいから後にしてくれ」とか言われた。もう報告なんかしない。
●規律を守ることが重要といっても、先輩たちが守っていない。結構いい加減なことをやっているし。バカ正直にやっているとかえって損をする。規律なんか適当でいいんだ。
●ついこの前までは「とにかくまずは職場に慣れよう。あせらずゆっくり慣れていけばいい」なんて言っていたのに、突然「仕事が遅い、もっとスピーディに仕事を片付けなさい」とか言い出すし、言ってることに一貫性が無い。まだ入社して半年なんだから、そんなになんでもできるわけないじゃないか。
この状況を放置すると
このような心理状態から、会社や上司、先輩に対して「否定的な見方」に陥ります。
そして、「仕事は金を稼ぐための手段」→「仕事における目標=ノルマ」→「やらされ意識」→「仕事が楽しくない」→「ますます仕事は手段」…、というネガティブなサイクルに陥ってしまいます。次第に前向きな気持ちが薄れ、行動が消極的になり、仕事が雑になってしまい、最悪の場合、たった数ヶ月で退職ということも少なくありません。
この結果、一番被害をこうむるのはその人自身なのです。
なぜなら、人間関係における矛盾は世界中どこに行ってもあることです。そして、そこから逃げることはできません。
それにもかかわらず、周囲のせいだけにして、仕事へのモチベーションが下がれば、自分自身が成長できません。成長できなければ、そのうち自己否定(どうせ自分なんて…)をし始めてしまいます。
さらに、自分を正当化するために周りを否定し攻撃的な姿勢を示せば、周囲から受け入れられず自分の存在価値自体が結局失われる、ということになるのです。
職場でなかなかうまくいかないのはさまざまなところに原因があります。上記のような状態になる原因は、もちろん会社・上司・先輩側にもありますが、何よりも重要なのは、その人自身の考え方や認識にあります。
すべて他の人のせいにしたところで物事は好転しません。また、職場には、本当に新入社員のことを気にかけ、「成長してほしい」「がんばってほしい」と願い、支えてくれている人がいるのも事実です。その事実を直視せず、自分にとって好ましくない方の事実ばかりを見てしまい、その結果、自分が損をすることほどばかばかしいことはないでしょう。
参考「職場環境活用プロセス理論」
※参考:社員基本アドバンストコースから、「職場環境活用プロセス理論」より、期待値の変化と行動チェック