イノベーションを起こす人と組織をつくる 第1回 イノベーションのキーパーソン
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今こそイノベーションを起こす時
「第4次産業革命」と言われ始めて、はや数年が経ちます。AI、Iot、RPAと言った言葉が普通にニュースで使われ、各業界も大きな変革期を迎えています。
例えば自動車業界では、電気自動車(EV)へのシフトが進んでいます。EVはいわゆる「エンジン」さえいらない構造であり、ガソリン車に比べて、部品点数が4割程度減ると言われています。当然、現在部品を供給している企業は大きな変革を迫られます。
また、カーシェアの普及によって「車を所有する」という感覚自体が変わってきています。「車を営業して顧客に購入してもらう」というビジネスモデル自体が変わってくるかもしれません。
衣料業界に目を向けても、ZOZOの台頭により業界は大きく変動しています。ZOZOスーツが発表された際は、「顧客が、全ての服をZOZOで買う」ビジネスモデルが確立されたといった声も聞こえました。
皆様のビジネス環境も大きく変化しつつあるはずです。しかし、「変化していることは分かっているが、まだ今のままでも何とかなる」「周りの様子を見ながら変えていけばよい」と考えている企業が多いのが実情です。
つまり、「分かっているが動いていない」という状況です。しかし、時代の大きな変化に対応せず、「あの時色々取り組んでおけばよかった…」となっては後の祭です。
今こそ時代の変化をチャンスに変えるためのイノベーションを起こすタイミングです。
イノベーションへの「キーパーソン」は誰か?
では、イノベーションを起こす際に、「まず」何をすればよいのでしょうか。それは、イノベーションにおけるキーパーソンに刺激を与え、変革が起きやすい状況をつくることです。
イノベーションのキーパーソンとは「経営幹部候補」「現場マネジャー」「顧客接点担当者」です。この3者がなぜキーパーソンなのか、どのように手を打つ必要があるのかを考えてまいります。
キーパーソン1:経営幹部候補
経営幹部候補とは、経営幹部一歩手前の「部長級」の方々を指します。当然、今の経営幹部がイノベーションのカギを握っているのは間違いありませんが、「候補」の方々が企業の未来を見据えて、思い切ったイノベーションを構想し、決断できる力を磨くことが必須です。
なぜなら、5年後・10年後を考えた時にその企業の舵を取っているのは、今の経営幹部ではありません。現在は「経営幹部候補」である部長級の方々なのです。部長級の皆様が、経営幹部の「言いなり」の状況では、到底イノベーションを起こすことは困難です。万が一イノベーション的な動きが起きても、それを継続することはできないでしょう。
市場の変化を敏感にキャッチし、新しい価値を創造し、思い切ってチャレンジする「創造的な組織づくり」ができる経営幹部候補を育てておく必要があります。そのような方々が経営幹部になった際は、思い切ったイノベーションを起こし、継続できる企業になるはずです。
キーパーソン2:ミドルマネジャー
いくら経営幹部候補がイノベーションへの想いを高めても、具体的に「イノベーションの中身」についてのアイデアを出すのは現場です。現場で日々生み出される発想が、イノベーションの原点なのです。現場からイノベーションを起こすためのキーパーソンとなるのが現場のマネジャーです。
私たちジェックは、様々な企業様のミドルマネジャーとお会いします。ほとんどのマネジャーは大変熱心で、部下思いであり、真摯にマネジメントを行っています。しかし、「何を目的にマネジメントを行っているのか?」という質問すると、多くのマネジャーは「組織の目標を達成するため」と答えます。
その答えが間違っている訳ではありません。しかし、「現場からイノベーションを起こす」ということを考えると物足りないと言わざるを得ません。
イノベーションを起こす現場をつくるためには、「成果を上げ続ける」ことを目的にマネジメントを行うことが求められます。来年も、再来年も、そして5年後も「上げ続ける」ことをねらうのです。「上げ続ける」ためには、時代の変化やお客様のニーズ変化を捉え、日々「新たなやり方」にチャレンジすることが求められます。そこにイノベーションの種が生まれます。
ただ、「新たなやり方」をマネジャーだけで生み出すには限界があります。メンバー一人ひとりに「新しいやり方を生み出す力」つまり「創造性」が備わっていることが必要です。これからの現場マネジャーは、「創造性を育てるマネジメント」を行うことが必須なのです。
キーパーソン3:顧客接点担当
顧客接点担当とは、直接お客様と接する「営業」「サービス」「コンタクトセンター」等の担当者を指します。
直接お客様と接している担当者は、「最近お客様からの要望が変わってきた」「お客様は〇〇に関心を持ち始めている」等、お客様の変化を敏感に察知しています。しかし、多くの場合、察知した変化に対して何かアクションを起こすことはありません。なぜなら、「自分達が変化を起こす当事者」と思っていない人が多いからです。非常に重要な「兆し」をキャッチしていながら、「最近、お客様の反応が変わってきたな…」と職場でつぶやき合って終わってしまう。これは大変もったいないことです。
顧客接点担当者一人一人が、「イノベーションを起こすためには、我々の情報がカギとなる」と考え、これまでにない価値をお客様と共創することにチャレンジをし、使命感を持ってお客様の変化を企業にフィードバックする。そのような動きがイノベーションを起こすためには必須です。
そのためには、顧客接点担当者が「なにをキャッチすればよいのか?」「どのようにキャッチすればよいのか?」「いかにフィードバックするか?」が分かっていなければいけません。もちろん、お客様から情報をキャッチするためのスキルも必要です。
現在、顧客接点部門に対する教育は、「感じの良い対応」「営業スキル」「クレーム対応」等がまだまだ多いようですが、これからは「イノベーションの当事者」としての教育が求められます。
「共創型イノベーション」でキーパーソンに動きを起こす
イノベーションは「誰かが」起こしてくれるものではありません。先ほどのキーパーソンが中心となって、自分達の力で起こすものです。しかし、目の前の目標達成に向けて、日々忙しい業務に追われていると、将来を見据えたチャレンジングな行動を取れない人が多いというのが現実です。斬新なアイデアを持っていたり、高い問題意識を持っていても、「今の業務の足かせになる」と考えて、行動を控えてしまうのです。そこで、私たちジェックでは共創型イノベーションをご提供しています。
「共創型イノベーション」とは、先ほどの3つのキーパーソンが集まり、徹底的にディスカッションをしながら、企業ビジョン実現に向けたイノベーションのアイデアを生み出し、現場で試行し、形づくる(共創する)プロセスです。そのプロセスを通じて、「イノベーションの当事者」としての意識を持つと共に、第4次産業革命をはじめとした、「変化の時代」を乗り切るために必須の能力を同時に磨きます。
各企業様によって、状況は全く異なりますので、事前に経営幹部の皆様とお話合いを行わせていただき、一緒に内容をデザインして展開します。共創型イノベーションの展開が始まった後も、参加しているキーパーソンの状況を見ながら、デザインした内容を進化させていきます。
次回からは、それぞれのキーパーソンに対して実際にどのような共創型イノベーションを行うことが効果的かをご紹介していきます。