「仕事を謳歌する組織」を創る六カ条 四.強みを磨く(中編)
本シリーズは、「お役立ち道の経営」推進に欠かせない「仕事を謳歌する組織」を創るための六カ条を、経営トップの立場からご紹介しています。
今回は、第四条「強みを磨く」です。
前編では、「一人ひとりが自分の強みで、市場やチームに貢献し、仕事を謳歌してほしい」との経営トップの想いを確認しました。今回は、その強みの発見や、お役立ち実現のポイントを確認していきましょう。
全3回の中編です。
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自分の「強み」認識を確認する
現場でよく聞くのは、「強みの前に弱みを直すことが先決だ」「なぜ、自分の強みを認識しなければならないのかが解らない」「自分には、特筆すべき強みなんてない」「強みを活かせ、という言葉は理解できるが、仕事の成果と結び付けられない」「強みを磨いて成果につなげるのは、面倒臭い」等です。
なかなか、メンバー自身が本気で「強み」を見つけ、その「強み」を伸ばすマネジメントが徹底できない場合も多いようです。
「強み」を伸ばすことが優先か、「弱み」の修正が優先か?
現場のマネジメント上では、「強みを磨け」という前に、「弱みを直せ」という価値観が根付いている場合もあります。
かつては、「決められたことを決められたとおりにやること」が良しとされました。「ミスをしない」「決められたことを決められたとおりにする」ということが、大前提であり、そのためには、「できないこと(弱み)ができるようになる」ことを重要視してきました。つまり、「弱みを直す」方向でのマネジメントが、当たり前だったのです。
しかし、今は、「全員が、知恵を出して、新たな価値創造の結果としての業績(成果)を追求する」時代です。「決められたことを決められたとおりにやれば、業績(成果)につながる」という時代は、遠い過去の話です。
弱みを修正するには、自己肯定感を土台にした、自己統制力が必要となります。これらを強化して、成果に結びつけるから、弱みも意味がないものになり、修正できるようになってくるのです。しかし、簡単にできるものではありません。むしろ、この自己肯定感と自己統制力は、「強み」に焦点を当て、伸ばしていく方が、修得しやすいのです。つまり、行動科学的にも、時代的にも、理に適ったマネジメントとなるのです。
「強み」を伸ばして、ある専門的な技能において完璧を追求し、芸術の域にまで到達できているような技能者は、数多いることも事実です。そういう人は、自分の「強み」も「弱み」も合わせて受けて入れて、「弱み」を意味の無いものにできているのです。そればかりか、人格的にも、他人を尊重できるようになっている場合が多いのです。
ただし、やったことが無いこと、少しかじって苦手だなとあきらめていることを「弱み」とはいいません。これらのことも、じっくりと取り組むことで、できるようになる、更には、強みとなることは沢山あります。「とことんやったけど、どうしてもできない」のが弱みで、「やったことがない、少しやったけどやりきれていない」のは、未習熟です。短絡的に「弱み」だと決めつけて、その人・その組織の可能性の芽を摘まないように注意が必要です。
「強み」の認識が先か、成果が先か?
「好きこそ、ものの上手なれ」「天は二物を与えず」というようなことわざがあるように、一般的には「誰しも、良い点は持っているものだ」ということを前提にしています。つまり、「自分の強みを伸ばせば、成果が上がる」という考え方が一般的です。そのため、自分の「強み」を認知するための診断ツールや、「強み」の整理の仕方等のノウハウが研究されています。
しかし、ビジネスにおいては、その仕事を選択した以上、「好き・嫌い」ではなく、「上手・下手」でもなく、考え行動し、成果を上げることが要求されます。つまり、成果を上げていくことで、「強み」になっていくという考え方が主流になります。
だから、「強み」を分析することよりも、仕事を通じて、スキルを練磨していくうちに、その中で、面白い・楽しいと感じたポイントや、成果に活かされたスキルを蓄積していくことで、その人の「強み」が確立し、他の仕事でも活かされるようになるのです。
お役立ちを追求していけば、「強み」が立ち上がる
さて、仕事の本来の姿は、関わる人や組織の「オールWin」のお役立ちです。自社や自分が提供するサービスや価値によって、お客様が良くなり、社会も良くなることに役立つことです。ライバル以上に役立っていなければ、選ばれることもなく、価値を創ることもできないのです。この本来の姿の実現を目指して、知恵を創発し、チームのシナジーを上げていくことが、成果(価値創造)に直結していくことになります。
①お役立ちしたいと思うことを実現する要になるのが、自分の「強み」
普通の社員は、より良い仕事をしたいと思っているものです。その「より良い」とは、自分の良さを出して、組織やお客様、社会に喜んでもらいたいというお役立ちの思いのことです。だから、社員一人ひとりや、チームでの、お役立ちの知恵に焦点を当て、成果創出に取り組んで行くことが、仕事の本質であるということになります。
②お役立ち実現に取り組んでいるうちに、活かされる「強み」が見えてくる
そして、お役立ちの知恵や力を発揮するプロセスで、自分なりに「できること」が「強み」の芽となって来ます。これは、単に、その人なりの良さだけでなく、お役立ち実現に直結する能力になるからです。「できること」は、「チームメンバーに配慮の言葉がかけられた」「役立つ情報を収集できた」「解りやすくまとめられた」など、どんな小さなことでも良いのです。
③お役立ちに取り組んで行くときに、「できること」を磨いていけば、「強み」になっていく
お役立ち実現に役立つ自分やチームが「できること」を積み重ね、意識せずとも思考と言動が取れるように、繰り返していくことによって、得意技になり、お役立ちに直結することで、「強み」として認識できるようになってくるのです。
「強み」を意図的に活用すれば、お役立ち実現が促進される
自分の中で「強み」と認識し始めた能力を活用することを考えるようになれば、他のメンバーとの「強み」のコラボレーションで、お役立ちの推進をすることも効果的になってきます。また、自分の責任として「ここまで準備する」ということも主体的に言えるようになるので、自分の「強み」に責任が持てるようになってきます。
そうすれば、ますます、お役立ち実現にワクワク感と期待感が生まれてくるようになります。
人間には無限の能力がある。「お役立ち道」の仕事ぶりで開花する
ジェックでは、「お役立ちの精神と技量を磨き続けていくこと」を「お役立ち道」と呼んでいます。「お役立ち道」の生き方を自分のものにしていけば、お役立ちにつながる能力は、伸びていくのです。つまり、自分の「強み」は、「お役立ち道」の仕事ぶりを通して明確になり、開発されることになるのです。
次回は、私の体験を交えて、実践をお話しします。