新規事業構想そのアイデア創出法とは
ビジネスパーソンの悩み解決相談室 経営者編
お悩み「新規事業のアイデア創出のヒントを教えてください」
経営の新規事業構想について、次のようなお悩みが届きました。
Q:「新規事業のアイデア創出のヒントを教えてください」
トップから今こそ未来に向けての新事業構想を練る時である、という大号令が出され、現在、新事業を検討している真っただなかです。
ただ、従来の事業の中で育った私には新事業といっても簡単には思いつかず、私の発案で新事業開発プロジェクトを組織したものの、現状は思いつき程度のアイデアしか出てこない状況です。何か新事業のアイデアを考える上でのヒントがいただければ幸いです。(化石燃料関連業界会社役員A)
3つの着眼点がカギ
新たな事業を構想し、意思決定することは、会社の将来を左右する重大な問題です。特にAさんの会社の場合、まさに企業の命運を賭けての検討であると思います。
新事業構想は、何に取り組むのかのアイデアを創出し、その実現の可能性をとことん検討した上で絞り込み、意思決定するというステップを踏みます。Aさんは、現在、その第一段階に立っているということですので、本稿では何に取り組むのかの「アイデア創出」に的を絞り、その着眼点をまとめたいと思います。
着眼点1:兆し情報
兆し情報とは、時代の変化の先端情報のことです。
ピーター・F・ドラッカーは、著書『すでに起こった未来』(ダイヤモンド社)の中で「未来は突然やってくるのではない。未来はすでに起こっている」と言い、問題はその変化に気付くかどうかであると結論づけています。
例えば先端技術の分野、情報技術の分野、また海外で始まっている変化、お客様、またその先のお客様の変化、行政の変化など、未来につながる兆しはすでに現れています。
しかし、それは未来を創ろうとするアンテナがなければ見えても見えず、開けども聞こえず、となります。
その兆し情報に関心を持ち、集め、その情報の中に新事業の芽を探すことは、アイデアを創出する第一歩であると言えます。
着眼点2:会社の強みから発想する
新事業は、その会社の強みが活かせる領城でなければ、成功は難しいと言えます。
ところが、会社の持つ強みそのものが、社内で認知されているかというと、案外そうではないケースもあります。
特に経営幹部が認識する強みと、第一線のメンバーが認識する強みが違うことがあります。現在の各部門の持つ強み、会社全体の中にある強みを洗い出し、その城みをもってすれば何ができるのかを考える、それがこの着眼点です。
「強みがなければ、買収すればいい」という考え方もありますが、「企業を買収し、異質の文化と仕組みを持つ企業を融合する」という点に強みをもたない企業は、たとえ企業買収を行って強みを持とうとしても、その事業を成功させることはできません。これも強みの問題です。
着眼点3:組織内の願望から発想する
どんなに有望と思える事業も、その事業に賭けたいという人材が社内にいなければ実現は難しくなります。
逆に、何としてもそれを実現したいと考えている人材がいれば、その人材の創造力がその事業を成功させる可能性があります。社内にある「こんな事業をやりたい」という願望を探してみる、これが第三の着眼点です。
この願望は、時として少数の社員の中で、また部署の中で知らないうちに熟成されているかもしれません。
また、多くの社員が過去に提案し、その時代の状況判断によって却下されたものの中に埋もれているかもしれません。そんな願望を探してみることです。
3つの着眼点で評価する
以上、アイデアを構想する3つの着眼点をご紹介しました。そこで、それぞれの着眼点から生まれたアイデアを、再度この3つの着眼点で検討してみます。
つまり、「時代の変化を先取りし・強みが活き・ぜひやりたいと思う組織内の願望がある」アイデアは、新事業として魅力のあるアイデアだと言えます。
また、着眼点のいずれかが弱かったとしても、何か一つ突出した魅力があれば事業化検討の余地は十分にあります。
この3つの着眼点で評価し、残ったものを本格的な事業化検討のステップに進めていくようにすればAさんの現状は打破できると言えます。
アイデアは自由に、検討は慎重に、決断は大胆に。ぜひ未来を創るために、より良い新規事業構想を創出してください。
最後に、未来創造に向けてドラッカーの言葉をご紹介します。新規事業創出の糧としていただければ幸いです。
「いかなる分野においてであれ、今日リーダーの地位にある組織のうち少なからざる者が、これからの三十年を生き延びられず、あるいは少なくとも今日の姿では生き延びられない。―中略- 成功への道は自らの手で未来をつくることによってのみ開ける」
(『明日を支配するもの』ピーター・F・ドラッカー著、 上田 惇生翻訳、ダイヤモンド社)
*本原稿は、株式会社ジェック「行動人」436号から転載・加工いたしました。