メンバーへの指示力UP! 企業が直面するマネジャーの課題
企業の成長に欠かせない要素の一つが、マネジャーの指示力です。組織が円滑に機能するためには、マネジャーがメンバーに的確な指示を出すことが求められます。しかし、さまざまな理由から指示の伝達がうまくいかない場面も。今回は、指示力を向上させるためヒントを考えます。
マネジャーの役割と指示力の重要性
マネジャーはチーム全体のパフォーマンス向上を担う重要な存在です。そのためには、メンバーが目指すべき方向を明確に示す必要があります。適切な指示が出されることで、メンバーは自分の役割を理解し、効率的に仕事を進められます。
しかし、マネジャーの指示力が不足していると、業務が適切に進まず、メンバーのモチベーションが下がる原因となります。明確な方向性が示されないと、優先順位がわからず無駄な業務に時間を割いてしまいます。また、指示が不明確だと誤解が生じ、結果として本来の目標に到達できないこともあるでしょう。
指示が伝わらない主な原因
・情報量の不足:具体的な内容や背景を省略して伝えている。
・一方通行のコミュニケーション:指示を出した後に、相手の理解度を確認していない。
・同一の伝え方しかしない:メンバーごとに異なる理解度が考慮されていない。
・口頭のみの伝達:記録が残らず、情報漏れや誤解が生じやすい。
上記の原因にあるように、ただ指示を出すだけでなく、メンバーがその意図を理解しやすいよう工夫することが大切です。そして、フィードバックを通じて、指示内容が正しく理解されているか確認することも重要です。
そのためには、マネジャーは常に「聞く姿勢」を大事にし、部下からのフィードバックを受け入れる姿勢を持つ必要があります。指示が誤解されていないかを確認し、必要に応じて修正もできます。メンバーが自由に質問や意見を言える環境を作ることも大切です。
また、管理ツールを活用することで、タスクの進捗をリアルタイムに把握し、適切なタイミングで指示を出すことが可能です。ただし、ツールに頼りすぎると単調な指示になりがちですので、共感や励ましといった人間的なアプローチも必要です。
解決のヒント
マネジャーが指示力を向上させる具体的な方法として、まずは自身のコミュニケーションスタイルを見直すことが挙げられますが、具体的には以下を実践してみることをお勧めします。
➤具体的で明確な指示を出す:
「5W1H」を活用し、誰が何を、どのようにすべきか詳細に伝えます。
➤理解したかどうかの確認を実施する:
指示後に必ず相手に確認し、不明点や異議がないかチェックします。
➤メンバーのレベルや勤務状況に合わせた伝え方をする:
個人の理解度に合わせた内容を適切な伝え方で伝えます。
➤テキストとして残す:
指示をメールやタスク管理ツールに残し、必要に応じて図やシナリオを活用します。
上記のようなことは、マネジャー研修やコミュニケーションに関する情報などでよく明示されている項目であり、すでに周知のことと思います。
知識としては理解しているのに、実際のマネジメント行動ではできていない、という場合は、マネジャー自身のスタンス(考え方)に原因がありそうです。
次項では、実践を阻害している可能性があるマネジャーのスタンス(考え方)について掘り下げてみましょう。
マネジャーのスタンス(考え方)
マネジャーの行動の奥にある考え方は次のようなものがあります。
➤メンバーが理解できないことについて
「伝えたことを理解できないのは、メンバーの勉強不足である。仮に分からないことがあれば、メンバーの方から積極的に質問してくるべきだ」=メンバーが理解できないのはメンバーのせい
確かに、何度も同じことを伝えても改善されない場合、メンバーの理解度や能力に問題がある場合もあるでしょう。
「Aさんはちゃんと正しく受け止めているのに、Bさんは指示を聞いていなかったのか、というくらいに伝わらない」というような場合、まずはAさんとBさんにどのように伝えたのか、どのような反応だったかを、マネジャー自身が自分の行動を振り返ってみましょう。
そして、次のようなスタンス(考え方)を持ってみましょう。
「伝えたいことを相手が理解できないのは、マネジャー自身の伝え方が適切でなかったからだ。メンバーのレベルはそれぞれで同じ伝え方をしても『メンバー自身が分からないことが分からない』状況もありえる。相手の理解度に合わせて伝え、理解してもらわなければ、伝えたことにならない」=メンバーが理解できないのはマネジャーのせい
➤コミュニケーションについて
「コミュニケーションは情報伝達や意思疎通であるから、報告・連絡・相談など伝えるべきことを正しくタイミングよく伝えればよい」
この考え方では、一方通行になりがちです。コミュニケーションは双方向です。
「コミュニケーションをとる相手は、立場や持っている情報量も違う。そして人間は感情の動物でもあるため、情報伝達だけにとどまらず、意志疎通を図り、互いの心理や気持ちを理解し合ったときにコミュニケーションは成立する。コミュニケーションは難しいものと認識し、相手の立場に立った伝え方をする必要がある」
マネジャーとメンバーでは、持っている知識や情報量が違います。そして、マネジャーにとっては当たり前のことでも、メンバーはそうではないことも多々あります。メンバーが理解できるように工夫して伝えることが重要です。
➤補足:「誰が」伝えるか ※受け止めるメンバーのスタンス(考え方)
以下はマネジャーのスタンス(考え方)ではなく、それを受け取るメンバーのスタンスについてお話しします。
「マネジャー自身がやっていないことをメンバーにやれと言われてもやる気なんて起きない」
皆さんがメンバーだったころ、「あの上司は口先ばかりだ。言っていることとやっていることが違う」と感じたことはありませんか。このような状況が重なれば、マネジャーに対する信頼が薄れ、指示を出されても本気で取り組もうとしなくなる可能性も出てきます。
指示を受けるメンバーはマネジャーのことをよく見ています。
「何を」指示されたかの前に、「誰が」指示したかで、その内容の受け止め方が変わる場合があります。
「マネジャーは完ぺきではないけれど、やろうという姿勢をいつも見せてくれている。自分たちもやってみよう」
「マネジャーは自分たちのことを考えてくれている。うまくいかなかったとしてもマネジャーがサポートしてくれるから、指示された通りがんばってみよう」
このようにメンバーが考えているのなら、メンバーとの信頼関係が構築されており、マネジャーからの指示に対しても、質問したり確認したりしながら、自立的に動こうとするでしょう。
マネジャーが率先垂範することこそが重要です。
まとめ
マネジャーの指示力は、企業の成功に直結する重要なスキルです。指示が適切に伝わることで、メンバーは自信を持って行動できます。そのためには、マネジャーがコミュニケーションの質を高め、メンバーとの信頼関係を強化することです。
そして、マネジャー自身は自分の考え方を見つめ直し、阻害している考え方になっているのであれば、その考え方から修正する必要があります。なぜなら、信頼関係構築を阻害している考え方のままスキルや知識を学んでも、うまく実践できないことがあるからです。
人と組織の在り方が企業の発展に大きく影響を与えることは周知のことです。だからこそマネジャーの指示力向上への取り組みは企業の持続的な発展につながります。