「行動変容」を促すメタモニタリングスキル (1)ダブル・ループ学習
最近、「行動変容」という言葉をよく耳にするようになりました。
「新しい生活様式」を定着させるための「行動変容」。人によりますが、なかなかうまく行っているとはいえないようです。
我々ビジネスパーソンも、新しい社会の創造に向かって、会社のビジョン実現、戦略実践、新たな成果創出のための、「行動変容」が求められています。しかし、こちらも一朝一夕にはできないのではないでしょうか。
「行動変容」は、どうすれば実現できるのか、そのメカニズムと、スキルについてご紹介します。
このようなことはありませんか?
市場環境が激変する昨今、自社の戦略にもとづいて、今の業務から更なる成長・変革が求められています。そのため、ビジョンや戦略を見直し、「これからわが社は変わっていこう!イノベーションを起そう!」と経営トップからメッセージを出す企業も増えてきています。
ところが、
- 社員にいくら呼び掛けても、現状の動きが変わらない
- 対象者にいくら勉強会や指導をしても定着しない
- ある程度の成長はみられるが、次第に行き詰って(伸び悩んで)しまう
- 個々人で頑張っている人も出てきているが、組織全体の変革につながらない
といったお声をお聞きすることも多くあります。
新しい成果創出のための、いわゆる「行動変容」を、個人だけでなく、組織ぐるみで起こすことが、変革には重要なことです。しかし、簡単にはいかないのが現実です。
なぜ、でしょうか?
「行動を支配する価値観(Governing values)」を知る
それは、人が変わる・成長するための「メカニズム」を理解していないからではないでしょうか。
そこで、クリス・アージリスが提唱している「ダブル・ループ学習」をご紹介します。
ダブル・ループ学習とは、何かしらの行動を取っていてミスマッチ(違和感)を感じた・失敗をした、などの体験をした時に、単に「行動」のみを振り返り修正するのではなく、「行動を支配する価値観(行動選択の際の判断基準)」まで深く振り返って、自分の価値観・考え方に自ら気づき、修正する学習方法のことです。
「行動」のみを振り返り修正することを、シングル・ループ学習といいます。
「行動を支配する価値観」は、どういうことかというと、例えば、感染症の対策について、
行動① マスクをしない
- Aさんの理由:マスクをすると息苦しいから、自分くらいはしなくて良い
- Bさんの理由:マスクと感染症の因果関係は無い
行動② マスクをする
- Cさんの理由:マスクの着用は、感染症拡大防止の有効な対策だ
- Dさんの理由:マスクをしていないと、周りの人から叱られる
このように、行動の裏には、人それぞれの理由が、千差万別にあり、複合的に絡み合っています。
これを、「行動を支配する価値観」と言います。
行動①のマスクをしないBさんが、「マスクを着けろ」と言われたときに、単純に「マスクを着ける」という行動に移すことを、シングル・ループ学習といいます。しかし、根本では、マスクを着ける意味を見出していないので、一時的にマスクを着用しても、そのうち「感染症拡大と関係のない無意味な行動はしたくない」と、マスクを着けなくなる可能性が高いといえます。
そこで、Bさん自身が持っている「行動を支配する価値観」は何かを深く掘り下げ、その価値観を変えて、真の行動変容を起こすことを、ダブル・ループ学習といいます。
ただし、人によって「行動を支配する価値観」のこだわり度合いが強い場合と弱い場合がありますので、シングル・ループ学習でも、簡単に「行動変容」ができる場合もあります。これが、人の「行動変容」の難しいところです。
この、ダブル・ループ学習のメカニズムを理解していても、正しく「振り返り」をして、正しく「修正」しないと、真の成長につながりません。振り返りの仕方は、トレーニングをすることで、ある程度できるようになります。これを、「メタモニタリングスキル」と言います。
成長につながる振り返りを習慣化し、「行動変容につながる」努力の生産性を高めることが重要なのです。
次回は、「メタモニタリングスキル」についてご紹介します。
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