チームを「私」の集合から「私たち」へ変える
複雑で流動性の高いビジネス環境に対応することは難しい時代になっています。このため、一人ひとりが自らの役割を自覚し、チームに積極的に貢献できることが求められています。
チームを「私」の集合から「私たち」へ変えるために、「ファシリテーション」「シェアドリーダーシップ」「チームビルディング」の観点で紹介します。
1.ファシリテーションでチーム力を高める
ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。(特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会より引用)
ファシリテーション力が高まることで次のような効果をもたらします。
コミュニケーションの活性化
ファシリテーション力の向上は、メンバー間の対話を促進し、誰もが意見を言いやすい環境を整えます。これにより、異なる視点やアイデアが引き出され、チームとしての問題解決力や創造性が向上します。
メンバーの主体性を引き出す
適切な問いかけや議論の進行、メンバーそれぞれの考えや責任感を引き出します。 これにより、一人ひとりが主体的に行動し、チームの目標達成に向けて積極的に貢献できるようになります。
合意形成を目指して進む
多様な意見が飛び交う中で、全員が納得できる結論を導くスキルが高まります。これにより、決定事項へのチーム全体のコミットメントが考えられ、行動力が強化されます。
心理的安全性の確保
全員が安心して発言できる場を作ることで、チーム内の心理的安全性を高めます。これにより、新しいことを始めるリスクを恐れずに挑戦ができる文化が育まれます。
効率的な時間管理と優先順位付け
会議や議論が無駄に長くなることを回避し、重要なテーマに焦点を当てて効率的に進みます。これにより、チーム全体の生産性が向上します。
ファシリテーション力を強化するためには
➤積極的な傾聴:
積極的な傾聴とは、相手の話に全神経を注ぎ、理解を目指すコミュニケーションスキルです。ビジネスにおいて信頼関係構築や問題解決に効果的です。相手の意見や要望を正確に把握することで、より良い意思決定や問題解決が可能になります。
➤オープンエンドな質問:
オープンエンドな質問とは、回答に制約を設けないタイプの質問のことです。 例えば「なぜそう思うのか?」などです。広い範囲で考えてもらい、自身の意見や感想を自由に述べてもらうことで、多くの情報を共有できるようになります。
➤視覚的な補助:
ホワイトボードやマインドマップを活用して、全員の意見を継続します。
これにより、ファシリテーションが果たす役割がより明確になり、チームの力を最大限に引き出すことが可能です。
2.シェアドリーダーシップで自走を促す
シェアドリーダーシップ(Shared Leadership)は、チーム内でリーダーシップを分散し、メンバー全員がリーダーとしての役割を積極的に発揮するアプローチです。
シェアドリーダーシップは次のような効果をもたらします。
個人の強みを引き出し、活用する
シェアドリーダーシップでは、各メンバーが専門知識やスキルに応じて、状況に適したリーダーシップを発揮します。これにより、メンバー全員がチームにおける自分の価値を認識し、積極的に貢献する環境が整い、チーム全体の知識やスキルを最大限に活用でき、特定のリーダーへの負担が軽減され、継続的な高いパフォーマンスを維持できるようになります。
責任感と主体性を高める
メンバーそれぞれがリーダーシップを経験することで、全員が目標に対する責任感や主体性を持つようになります。メンバーのモチベーション向上や問題解決と目標達成に向けたスピードと質の向上につながります。
多様な視点からの柔軟な意思決定
複数のリーダーが協力することで、多様な視点やアイデアが意思決定に反映されます。これにより、創造的で現実的な解決策が生まれ、イノベーションを推進します。また、リスクの分散と意思決定の精度の向上にもつながります。
リーダーの育成と持続可能性の向上
メンバー全員がリーダーシップを経験することで、組織全体としてのリーダーシップ能力が向上します。これにより、リーダー育成が促進され、チームの持続可能性が確保され、長期的な成果が期待できるようになります。
チームの心理の安全性を高める
リーダーシップが分散されることで、一部のメンバーに負担やプレッシャーがかからず、全員が意見を出しやすい環境が生まれます。
シェアドリーダーシップの実践例
➤リーダーのローテーション::プロジェクトや課題ごとに異なるメンバーがリーダーシップを発揮する。
➤分散型タスク管理:各メンバーが責任者として特定のタスクやサブプロジェクトをリードする。
➤意思決定の分権化::重要な決定事項を全員で議論し、合意形成を決意する。
3.チームビルディングで関係を強化
チームが単なる個人の集まりではなく、協力して成果を生み出す強固なユニットへと変わり、目標達成や新しい価値創造ができるようになるためにも、適切なチームビルディングが行われる必要があります。
信頼関係の構築
メンバーがリスクを恐れずに意見を共有できる環境が整い、チーム内でのオープンなコミュニケーションで、対立や対立を減らし、協力的な関係を促進します。
目標に対する共通認識
メンバー全員がチームの目標やビジョンを共有し、一致団結して行動する基盤を作ります。チーム全体の方向性が明確になることで、メンバーが共通の目的に向けて積極的に行動できるため、効率的な目標達成につながります。
個人の役割と責任を明確にする
チームビルディングのプロセスでは、各メンバーの強みや役割を明確にし、それぞれがチーム内でどのように貢献できるかを具体化します。これにより、作業の重複や責任、不明確さを防ぎます。
メンバーが自分の価値を認識し、強みである能力やスキルを発揮できます。
士気とモチベーションの向上
メンバーが成功体験を共有し、達成感を得る機会を持つことでチーム全体がポジティブな雰囲気で活動でき、次の課題に向けてもモチベーションが維持され、持続的なパフォーマンス向上につながります。
チームビルディングの具体例
➤アイスブレイキング活動:チーム間の緊張をほぐし、親近感を育てる。
➤スキル共有セッション:各メンバーの強みを全員で共有し、その間に行う方法を探る。
➤課題解決型のグループワーク:現実の業務に即した問題に取り組むことで、実践的な連携力を強化する。
「私から私たちへ」の変化を実現するためには、上司のリーダーシップやマネジメントが重要です。チーム力を上げ、組織の価値創造力を高めるための実践の参考としていただければ幸いです。